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パパ読ンデ

光を越え、事象の地平面で逢いましょう

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面影

妻の母が亡くなりました。

義母は63歳という若さで、

97歳で入院中の彼女の母親を差し置いて、

突然他界してしまいました。

義母はとても愉快で可愛い女性でした。

バーベキューをしていて、

服を着たまま川で泳いだり、

ヒップホップダンスのDVDを見ては、

おぼつかない足取りで髪を振り乱しながら踊るなどは

日常茶飯事でした。

ピンク色の可愛い小物が大好きで、

沢山のハートや苺の形のクッションが居間に並び、

敷物やカーテンなどもまるで少女の部屋のように

可憐なものを選んでいました。

そして末っ子の義弟を可愛がり、

義弟の部屋に勝手に立ち入っては、

掃除をしたり模様替えをする溺愛ぶりでした。

そろそろ彼女と結婚しようかという義弟は

猛烈にうっとうしがりつつも、

なぜか実家を離れるどころか外泊もしませんでした。

元々子供好きの義母は、

産んだ子が大きくなって赤ちゃんが家族にいないと

物足りなくなって五年おきに四人子供を儲けたそうです。

結婚当初、実家を離れる妻を私の家へ連れてでる時、

助手席に座っている妻に向かって

義母が泣き崩れながら手を振っていました。

おかげで私の新婚の門出は湿っぽいものでしたが、

こんなに母に愛されている妻が羨ましくもありました。

妻の姉と妹もそれぞれ家庭を築き、

子供たちが離れていってしまった喪失感が、

義母の精神を蝕んでいたようで、

その後義母は睡眠薬や向精神薬を常用するようになりました。

脈絡もない話やしつこい繰言に周囲のものは辟易していましたが、

いつでも天真爛漫に振る舞い、

他人に迷惑をかけたり子供に煙たがられたりもしましたが、

そんな無邪気な乙女のような義母にあうのが楽しみでした。

だから彼女がとりとめもないお喋りにいつも耳を傾けていました。

義母には両親に愛されていなかった気持ちが強く、

子供が結婚して出て行っただけでも

見捨てられたような気になってしまうのかもしれません。

何十年経ってもその寂しさから抜け出せなかったのでしょう。

そう理解していましたので、

妻にあまり邪険に扱わないよう言っていたのですが、

義母から電話があると

妻はいつも不機嫌に応対していました。

妻が最後に声を聴いた電話で、

義母は泣きながら妻に会いたいと言っていたそうです。

夜、子供を寝かしつける用意をしていると、

妻の携帯が鳴りました。

こんな時間にかけてくるのはきっと義母だろうと思い、

妻にそう言いました。

でも、妻の「嘘でしょ」との切羽詰った声が、

私の予想が外れたことを知らせました。

うそ、やだよ、と際限なく繰り返し、

携帯を持つ妻の手が激しく震えました。

義母が入浴中なのに物音がしないので、

義父が様子を窺うと、

浴槽の底に義母は沈んでいたそうです。

夢中でお湯から引き上げたけども、

すでに心肺が停止していたようです。

電話を終えると妻の嗚咽はたかまりました。

私の腕の中で、苦しそうに

「やだよう、ママが死んだらやだよう」

と号泣が続きました。

妻を取り巻いていた息子達も釣られて泣きだし、

私はただ、強く妻の肩を抱いていただけでした。

結婚して以来、ほんの八年の付き合いでしたが、

義母が優しく私を庇ってくれたことが何度かありました。

私は子供のころ責められることが多く、

常に自分の行動の結果に責任を負って生きてきたので、

妻子や妻の親族の前なのに、

優しくされた感激のあまり大泣きした夜は今も忘れられません。

もっと義母に頼られたいと思って、

いろいろ世話を焼こうとしたのですが

私のことは娘の旦那とわきまえているのでしょうか、

あまり私に手放しで甘えてはくれませんでした。

私は私なりに義母を愛しました。

だから後悔はありません。

しかし妻には心残りが無数にあるようです。

私は義母が好きでした。

だから彼女から奪った娘である妻を、

義母が欲して得られなかった分も上乗せして愛しぬく、

そう私は決意しました。





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  1. 2011/04/19(火) 00:10:05|
  2. 人間ライフ
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