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パパ読ンデ

光を越え、事象の地平面で逢いましょう

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偶然でない何か

全く面識の無い同業者に電話で頼まれて、

ある会社を仕事のため訪問しました。

受付で用件を話すと、女性が社長の自宅へ連絡を入れていて、

社長室で待つように指示されました。

社長室で女性秘書にお茶を頂き、十分ほど座っていると、

乱暴に扉が開き、「応接室で待たせとけって言っただろ!」

と社長と思しき壮年の男性が秘書を怒鳴りつけました。

何事かと思っていると、私にも「こっちへ来い!」と顎をしゃくりました。

隣の応接室へ入ると、ドアを閉めるように指図され、

社長は床が一段高くなった社長机に腰掛けて、

一秒に一回の割合で舌打ちをしていました。

こりゃ、見ず知らずの同業者にババを引かされてしまったな、

と気軽に仕事を引き受けてしまった私は後悔せずにはいられません。

社長は電話の受話器をあげてボタンを乱暴に押していたのですが、

思うように電話が繋がらなかったのか手で電話を叩き、

終いには受話器でガンガン殴りつけていました。

何をそんなに取り乱すほど怒っているのか理解できませんでしたが、

その光景は人間の癇癪を判りやすく表現していて、

まるでテレビドラマでも見ているように鮮やかでした。

やっと繋がった電話での会話から察すると、

私が訪問した事で、社長が数千万円の買い物をしたことが

奥さんにバレて揉め事になり、

そのために私はとばっちりを受けたようです。

そう言われても訪問しなければ私の仕事は成り立たないので、

私に八つ当たりされても困ってしまいます。

社長の買い物は数千万、この仕事で私が得るお金は数千円、

何だか割りに合わないので何の義理も無いこの仕事を投げ出して

帰ってしまおうかとも思いましたが、

この怒り心頭のワンマン社長になぜか惹かれるものがあり、

こんなに感情を剥き出しにした人を観察する機会も滅多にないので、

頭を下げて詫びを申し上げました。

会社の規模は大きくはないですが、

社長なのですからかなりお金持ちな筈です。

お金があまり無いのに数千万円使ったらそれは揉めるでしょうが、

きっと何億円も持っていると思われます。

それなのにどうしてそんなに慌てふためいているのか、

私には理解できませんでした。

お金が沢山あるのですから、

安心して大らかな気持ちになれそうなものを、

自分の思い通りに事が運ばない、と一々キレていては、

お金があっても幸せな人生を送っていないのかな、

と書類を放り投げる社長を見て考えました。

まるで二歳の次男が反抗期の時のようなその姿に、

愛情不足の男の子がそのまま歳をとった気がして、

私は出来るだけの愛情を込めて再び謝罪しました。

その後、社長は舌打ちを続け、悪態を吐きながらも、

私の仕事をキャンセルすることはありませんでした。

その会社を後にして車を運転していても、

どうしたら先ほどの社長が心の平安を得られるのかばかり考え、

運転の気が散ってしかたがないので、

気持ちを切り替えるために車を停め、

山間の田舎道を散歩しました。

草むらに舞う蝶を見、

羽を休めているトンボを捕まえ、日差しを浴びて歩くと、

道の途中にその地区の氏神を祭る侘びた神社があったので、

あの社長が安心して幸せに暮らせるように手を合わせ、

あとは神様にお任せする事にしました。

夕方、私がある役所で長椅子に座っていると、

「おう」と低い声が私に向けて発せられ、

顔を上げてみると、なんとあの社長でした。

その日初めて会った人に、全く違う場所でまた再会するなんて、

私は驚きを隠せませんでした。

社長もそう感じていたのか、

顔には微笑が浮かび、私を怒鳴りつけてくる気配はありません。

私に仕事の進捗状況を尋ね、すぐに去って行きましたが、

そこで社長に再会して私はとても心が安まり、

自然と、身を翻した社長の後頭部へ向けて、

気持ちを込めて礼を述べずにはいられませんでした。




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  1. 2010/05/27(木) 23:50:43|
  2. 人間ライフ
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